この『ラヴソング』は、「出逢ってしまった運命の人同士の関係が切なすぎる、10年間のラブストーリー」なんです。息もつけないほどにハラハラドキドキしながら、「もし私ならどうする?」と、思わず感情移入せずには観ていられない物語。「恋愛って、一人だけの想いや行動だけでは進められない」昔こんな言葉を誰かに教えてもらいました。 舞台は、まだイギリスから返還前の中国の「大陸」と「香港」から、最後はNYへ。中国の「大陸の人達の魂の声」とも言うべきテレサ・テンの歌が染みるんです。 「なぜ、『テレサ・テン』が、これほど中国の人に愛されたか?」という疑問にも、ふんわりわかりやすく答えを教えてくれます。
シウクワンとレイキウの出会い
1986年。
中国の大陸から多くの若者が、大志を胸に香港へやって来ます。
その中の一人として、レオン・ライ演じるシウクワンが、汽車に乗って登場します。
「呼ぶから待ってて」と、故郷の天津に残してきた恋人シャオ・ティンに、
手紙で話すようにナレーションがちりばめられています。
シウクワンは香港で娼婦館を営む叔母を頼り、叔母の彼氏だという映画俳優のサイズの合わない背広を借り、知り合いの鶏肉を運ぶ仕事をもらいました。
初給料日に恋人へプレゼントを買い、その足で初めてマクドナルドに、ワクワクしながら入ります。
そこで注文の仕方を教えてくれ、良い仕事を得るために、英会話学校に入ることを勧めてくれたのがマギー・チャン演じるレイキウ。
レイキウは、「母に家を買ってあげるんだ」と、猛烈に働きお金を貯めていました。
そして、何も知らないシウクワンに、いろんな生きる知恵を授けてくれます。
ある日の帰り道、大陸の人にしかわからない歌でがきっかけで、レイキウも実は大陸人だと知り、二人の距離は一気に縮まります。
大陸から来た二人の恋の始まり
1987年の大晦日。
レイキウは「絶対に儲かる」と、テレサ・テンのカセット販売店を持ちますが、「テレサテンの歌が好きだというと、大陸人だとばれる」という理由で失敗してしまいます。
シウクワンが、小さな部屋でレイキウの疲れと寒さを気遣い、何枚もコートを着せてるうちに、ギリギリまで引っ張った気持ちのゴムをはじくように、二人は結ばれます。
シウクワンは、残してきた恋人と共有したい話が無いと気付いてしまいました。
恋愛?ともに過ごす日々だが…
二人は、大陸人が使う「同志」と呼びあい、お互いを友達としながら、お金を貯めるために一生懸命に働きます。二人で居れば何をしても楽しい愛ある日々を、共に支え合います。
株で、おもしろいようにお金が貯まりだしただしたレイキウは、シウクワンと夢を語り合います。
ところが1987年10月。
レイキウが全資産をかけていた株で大失敗し、マッサージ師に…。
そこで、お客として登場するのが、やくざのボス『パウ』です。
刺青にも動じず「怖いのはネズミだけ」というレイキウを気に入ります。
ある日、シウクワンが恋人と同じブレスレットを、レイキウに贈ります。
愕然としたレイキウは、「何しに香港に来たのか、お互いに冷静になりましょう」と離れます。
結婚、そして夢を叶えた彼女
1990年。
シウクワンは、恋人を天津から呼び、結婚します。
結婚式には、大切なレイキウも呼びました。
久しぶりに会えたレイキウは、やくざの女になり、女社長になっていました。
「お互いの夢をかなえられたわね」と話しながらも、
お互いに複雑な気持ちで家族ぐるみの付き合いを始めます。
運命
ある日、レイキウはウエディングドレスの写真を撮ってあげたいと、シウクワン夫妻を自分のドレスショップへ連れて行きます。
そこで、着替えるシウクワンを見てしまい、抑えていた気持ちがよみがえります。
その後、用事のある妻を途中で降ろし、シウクワンを車で送ってあげる途中に、テレサ・テンの「グッバイマイラブ」がラジオで流れ、なんと本物が目の前に!!
走ってサインをもらいに行くシウクワンを見ながら、感情を抑えきれなくなったレイキウ。そして、シウクワンも。
「毎日一緒に居たい」と、お互いのパートナーに別れを告げることを決意し、シウクワンはレイキウと一緒に、パウの元へ向かいます。
その時、家の前に警察が。パウが事件を起こし行方をくらませたことを知ります。
パウからポケベルがあり、組の者にパウの元へ船で運んでもらいます。
「すぐに帰ってくるから」とレイキウに言い残して。
心配してパウの元に向かいますが、ピンピンしています。
「なんで来たんだ!すぐに帰って熱い風呂に入って、次の男を探せ!!」とパウ。
困難から助け上げてくれ、自分の身よりレイキウを気遣うパウに、どうしても別れを言い出せません。
二人は固く抱き合い、離れられませんでした。
帰ってこないレイキウでしたが、シウクワンは「もう戻れないんだ」と妻に告げ、家を出ました。
叔母の家に戻ると、財産を全部シウクワンに残して亡くなっていました。
仲が良かった娼婦の一人はエイズを抱え、シウクワンの英語教師と共に香港を去りました。
シウクワンは、それを全部元妻にあげると残し、NYへ移ることにしました。
NYでのすれ違い
シウクワンが世話になった鶏肉屋は、NYでチャイニーズレストランになっていました。
ここでまた世話になることにしたシウクワン。
レイキウと共に、2年もの間ホテル住まいで逃げ回っていたパウ達も、「そろそろ、ここNYで落ち着こう」と家を探すことにしました。
しかし、一緒にコインランドリーに向かい、レイキウを待ってる間、子供のけんかの仲裁に巻き込まれ、パウは銃で撃たれて死んでしまいます。
警察に、パウの遺体を確認させられ、崩れ落ちるレイキウ。
とっくに切れていたビザのせいで、レイキウは48時間以内に香港に戻される事に。
空港に向かうパトカーの中から、なんとシウクワンが自転車で走る姿を見つけるんです。
パトカーを飛び降り、走って叫びながら追いかけますが、見失ってしまいました。
運命の糸
時は流れ1995年。
香港が中国に返還され、NYで中国人相手に観光ガイドの仕事で忙しいレイキウ。
5月8日、グリーンカードが取れた日に、テレサ・テンがなくなったと報道されている街のテレビで、
様々な思いを抱えて、観ていました。
ふと隣を見ると、そこにはシウクワンが。
本当の事と思えない表情が、まるで昨日まで一緒にいたような気持ちのようです。
「もう二度と離れないでね」と、願わずにはいられませんでした。
「宿命は変えられないけど、一生懸命に生きていれば、運命は自分で変えられる」という言葉を、誰かに聞いたことを思い出させてくれました。
今、叶えられないことを、とりあえず置いておいて、やらなければならないことをやる。
諦めずに想い続ければ、やり続けることができれば、もしかして…。
「私も、頑張って生きよう」と、気持ちをデトックスさせてくれる名画です。